<気づきのヒント16>「復職したのですが、期待にこたえられません」 

うつ病での休職からようやく復職できたTさん、30代会社員。

復職に際しては、最初は残業、出張なし、疲れがたまると悪化するまえに有給休暇をとることなどを人事や上司も理解してもらい、まわりにも迷惑をかけない自分なりの適応パターンがとれるようになっていました。

ところが、人事異動で上司が変わり、これまでの事情を知らない上司は「休みすぎる、まわりと同じように成果をだせ、自己管理ができていない」など厳しい言葉を出してきます。

Tさんは、自分のがんばりが足りないのか、やはりこの仕事はむいてないのかと自分を責めてしまいせっかく芽生えてきた自信を失いかけています。

そんなTさんの気持ちを聴いていくと、新しい上司の言動に「なにかおかしい」とも感じています。

以前のTさんはは、上司の期待にはなにがなんでもこたえようと知らず知らずに無理を続け、うつの症状が出ても病院にも行かずに、まだ頑張りが足りないと仕事を続けていたのです。
今回の休職しての治療の中で、このことに気付き、これまでとは違う働き方の必要性を身に染みて感じていたのですが、また揺らぎはじめています。

しかし、今の勤務パターンは、治療のなかで医師やカウンセラーと考え、前の上司も人事も了承してくれている、これまでの新しい上司は事情も知らず一方的すぎるのではないか、ここで無理をするとまた以前の繰り返しになってしまうのでは、ということから、元の上司に相談してみることにしました。

元の上司に話してみると、「彼はああいうタイプだから、前の職場でも具合が悪くなった部下がいたようだ」とのこと。

そこで、Tさんの今の目標は「上司の理解を得ること」ではなく「上司に巻き込まれないようにすること」とすることに変わりました。
上司からはかわらず厳しい言葉が出てきますが「すいません、気をつけてはいるんですが」と軽く流すようにしています。

復職後の職場、上司の理解はとても大切です。
しかし、なかなか理解してもらえない上司もいます。
相手の考えが変わればいいのですが、そこは相手の中の問題「他人の考えは変えられない」として手放すことも必要です。

(事例は、複数の実例や関連資料の組み合わせで構成しています)