<気づきのヒント11> 「腰痛」

慢性腰痛だからと初めからカウンセリングに来る人はまずいません。
普通は整形外科を受診します。あるいは鍼灸やマッサージ治療院にいくでしょう。

しかし、うつや不安障害、対人関係、など心の相談でカウンセリングに来る人の中で、腰痛などの身体の慢性的な痛みを訴える場合が少なからずあります。

カウンセリングではもちろん「心の問題」に取り組んでいきますが、その問題が落ち着いてくると、慢性的な痛みが軽減してくる場合もあります。

心の問題が身体的症状(軽い症状から悪性腫瘍、アレルギー、リウマチ等々)に影響していることは従来からよく言われてます。

以下、腰痛・痛みと心理療法に関してまとめてみました。

①痛みの慢性化

怪我は治癒したのに痛みだけが残ってしまうこともよくあります。
痛みが再発、慢性化すると、日常生活にも大きく影響し、精神症状も悪化します。

痛みが慢性化するのは
・脳が痛みに過敏になり、少しのきっかけで痛みを増幅させたり持続させたりする
・痛みを抑える物質を放出する脳の機能がストレスなどで低下する
・痛みの信号を脳に伝える機能が、気分や思考で変化する。否定的な思考で通りやすく、プラス思考で通りにくくなる。(ゲートコントロール理論))
・異常がないと言われるとより不安になり、意識が痛みに集中、痛みを避ける行動により生活に支障が生じ、この痛みさえなければとさらに痛みに意識が集中する。
などが考えられています。

これらに対応する心理的アプローチとしては
・起こっている事実と感覚、感情、行動を正確に客観的にとらえて、
ものごとのとらえ方や思考のクセを、より適応的なものにしていく方法(認知の再構成)
・身体をリラックスさせるリラクセーション法
などがあります。
うつ病の治療に使われるようになってきた「認知行動療法」です。

②腰痛治療の常識の変化

なかでも、慢性腰痛についてはここ数年次のような考えが定着してきました。

——————————————————–
NHK今日の健康2013.7.3  腰痛を徹底改善「ストレスも関係!」
から引用

①心理的要因が起こす腰痛
一般に、発症から3か月以上続く腰痛を慢性腰痛と呼びます。
慢性腰痛を起こす要因には、骨や筋肉に異常がある「器質的要因」、
家庭か職場などの「環境的要因」、うつや不安などの「心理的要因」があります。

腰痛の原因がはっきりせず、保存的治療(保存療法)を受けても痛みが長引く場合には、心理的要因の中でもストレスが関係している可能性が考えられます。

精神的なストレスが強いと、痛みを抑える脳内物質が放出されにくくなったり、楽しいときには痛みを忘れるような仕組みが、うまく働かなくなったりします。

②認知行動療法
近年、ストレスが原因の腰痛には、うつ病などの精神療法として行われてきた「認知行動療法」という治療が有効であることがわかってきました。

痛みも含めて、マイナス思考に陥っている原因を1つずつ解決したり、回避する方策を見つけたりして、前向きな気持ちになってもらうことが目的です。

まず、患者さんの状態を問診やアンケートから評価し、治療方針が決められます。
治療の内容は、患者さんの状態や生活環境などに応じて変わり、薬物療法や運動療法、心理面のケア、生活のアドバイスなど、多面的に行われます。
そのため整形外科を中心に、神経精神科、リハビリテーション科、麻酔科など複数の診療科の医師や理学療法士、看護師などとも連携して治療に当たります。

——————————————————-

このほか同様の内容があります。
NHKチョイス 腰痛 原因はストレス?

NHK今日の健康
腰痛をしっかり治す「この腰痛は何が原因?」

③腰痛診療ガイドライン

日本整形外科学会「腰痛診療ガイドライン 2012年」でも、心理的・社会的要因があることが明記されています。
さらに、慢性的な腰痛治療として、
安静より適度な運動が必要なこと、
画像診断は全例に必要ではないこと、
などとともに
「認知行動療法」の有効性も記述されています。
(欧米ではすでに同様のガイドラインが常識になっています)

*慢性腰痛には、身体的な損傷や消化器系・泌尿器系・婦人科系疾患などが原因の場合もあるので、まずは専門医の診断が必要です。