徹夜勤務明けにミニバイクで帰宅途中、事故死した新入社員の両親が、過労による睡眠不足が原因だとして勤務先に損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁川崎支部の橋本英史裁判長は8日、通勤方法にも会社側の安全配慮義務があるとして「過労事故死」と認めた上で、和解勧告した。
遺族が厚生労働省で記者会見し明らかにした。和解条項には解決金支払いのほか、既に実施している労働時間管理や勤務間インターバルなど再発防止状況の公表も含まれ、双方が受諾した。
死亡したのは、商業施設で植物の設営などを行う「グリーンディスプレイ」(東京都)の新入社員だった八王子市の渡辺航太さん=当時(24)=。アルバイトから社員登用されて間もない2014年4月、夜通しで勤務した後、単独事故を起こした。居眠り運転だったとみられる。
橋本裁判長は勧告で、直前1カ月の残業が91時間余りに及んだとして、「顕著な睡眠不足」を認定。バイク通勤は会社の指示だったと指摘した。
電通新入社員の過労自殺にも言及し、「過労死撲滅は喫緊に解決すべき重要課題で、従業員や家族、社会全体の悲願だ」と強調。過労死等防止対策推進法の定義に該当しない過労事故死についても「過労死や過労自殺の類型とともに防止対策の推進が期待される」とした。
母淳子さん(61)と代理人弁護士は記者会見で、「過労事故を防ぐ会社の安全配慮義務の先例となり、画期的だ」と高く評価した。
(時事通信)
2018年2月8日