book「耳の傾け方 こころの臨床家を目指す人たちへ」

「耳の傾け方」 こころの臨床家を目指す人たちへ
松木邦裕 岩崎学術出版社2015年

 

タイトルからすると、よくある「傾聴」「受容と共感」の入門書ともとれるが、
内容は全く異なり、とても奥が深い。

著者は、精神分析臨床家、精神科医、京大大学院教授、精神分析関連著書多数。

目的は「こころの臨床家の専門的な聴き方」を著すことであり、
前半は、専門的な深い支持的な聴き方、後半は新たな聴き方精神分析的リスニングで構成される。

基本的な聴き方から、精神分析的聴き方まで、7つのステップが示される。
その項目のみ以下に紹介する。

第一部 深い支持的な聴き方 (能動的な聴き方)
ステップ① 基本的な聴き方― 批判を入れず、ひたすら耳を傾ける
ステップ② 離れて聴くー 客観的な聴き方の併用
ステップ③ 私自身の思いと重ねて聞く
ステップ④ 同じ感覚にあるずれを細部に感じる
ここまでを十分に身につけたうえで次のステップにむかう。

第二部 精神分析的リスニング こころを感知する聴き方
ステップ⑤ 無注意の聴き方
①から④の聴き方を退け、受身的に聴く聴き方
ステップ⑥ 平等に漂う注意をもって聞く
「記憶なく、欲望なく、理解なく」聴く、流し聴く(聞き流すではなく)
聴き方の順序を放棄し、気持ちを宙に浮かし漂わせた聴き方
ステップ⑦ 聴くことから、五感で感知することへ
鍛えられた直観、 転移の中に生きてクライエント/患者を感知する

ステップ⑤では、ビオンの言葉「患者から馬鹿にされることを許せない分析家(臨床家)には大きな問題がある」
を引用し、「理解できないことに持ちこたえておくという“負の能力”が求められます」と述べているところもある。

特に後半では、臨床場面での臨床家の微細なこころの動きが、とても細やかに具体的にありありと著されており、内容の理解にとても役立つ。

聴き方は、限りない広がりと奥の深さがあることを思い知らされる本書である。