book「身体はトラウマを記録する」脳・心・体のつながりと回復のための手法

「身体はトラウマを記録する」
脳・心・体のつながりと回復のための手法
ヴァン・デア・コーク  紀伊國屋書店2016

 

著者は、PTSD・トラウマの臨床、研究の世界的第一人者。
本書はその30年に渡る臨床と研究の集大成と言われる。

ベトナム帰還兵の治療、研究のなかから定まったPTSD概念、
その後の長大な研究成果、回復へのいくつかの最新アプローチ
が示され、私たちの視野を広げ臨床での判断力を支えてくれる。

ここでは、その中身ではなく著者の臨床、研究の姿勢を紹介する。

—-あとがきから

「今日の世の中では、安全で健康な人生を送れるかどうかは(中略)
住居地、収入、家族構成、雇用、教育の機会が大きく物を言う、
(中略)
貧困や失業、質の劣る学校、社会的孤立、銃器の手に入れやすさ、
標準以下の住居などがみなトラウマの温床となる。
トラウマはさらなるトラウマを生み、傷ついた人は他の人も傷つける」

「今やトラウマは私たちにとって最も緊急の公衆保健問題であり、
それに効果的に対応する必要な知識はすでに存在する。
自らが知っていることに基づいて行動をおこすかどうかは、私たち次第なのだ」

「私たちの社会は今、トラウマを強く意識する時代を迎えようとしている」

—-これは、トラウマは精神科医、心理士だけの課題でなく、
教育、福祉、介護、法曹、行政、政治の領域においても
社会の現実から目をそらさず、
トラウマの成り立ち、影響を強く意識しなくては、
何も進まない時代にいるということを訴えている。