book「オープンダイアローグとは何か」

「オープンダイアローグとは何か」斉藤環 医学書院2015

オープンダイアローグ(開かれた対話)は、フィンランドで開発、実践されている、今注目を集める統合失調症治療法。

昨年、オープンダイアローグのドキュメント映像がネットで公開され、より広く知られるようになってきた。

ドキュメント映像  日本語字幕付き本編(74分)  予告編(3分)

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本書は、著者の解説と、実践の中心セイックラ教授の論文3篇からなる。

解説では、オープンダイアローグの概略、理論、臨床が簡潔に整理されている。

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フィンランドの一地方の病院で1980年代から開発、実践されてきたこの治療の原則とアプローチは、

①向精神薬の使用を極力避ける。

②患者から連絡が入ると24時間以内に、病院スタッフ(医師、看護師、心理士、福祉士など)複数人のチームが患者宅に向かう

③患者宅で、このチームと患者、家族がミーティング(開かれた対話)をもつ。
これは、状態が落ち着くまで毎日続けられる。このチームが継続して関わる。

④このミーティングは、「全員が平等、秘密は持たない、全員の意見を尊重、特に患者の意見を重視、治療法は患者が決める」原則で、チームメンバーも患者、家族のなかで考えや気持ち、治療法などを話しながら進めていく。
患者の幻覚、幻聴などの話もしっかり表現できる場とする。

という、従来の精神医療では考えられないもの。

このサービスは、フィンランドの社会的医療の中で、無料で提供されている。

この中で

①入院治療期間が平均19日短縮
②再発率24%に低下(従来の通常治療では71%)
③統合失調症患者人数は90%減

などのエビデンスが示されている。

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オープンダイアローグは、技法や治療プログラムではなく、哲学や考え方であるという。

初期に毎日行われるミーティングは、患者や家族の安心感、保障感となり、不確実な状況を耐えていくための支えとなる。

「ポストモダン」「社会構成主義」「オートポイエーシス」などの理論やとらえ方を引用しながら、オープンダイアローグのなかでは、「治療」そのものがではなく「対話」をつないでいくことが目標であること、ミーティングのスタッフメンバーは「診断」したり「介入」ではなくダイアローグ(対話)を続ける環境をつくることが仕事であるという。

幻覚、妄想、言語を絶した恐怖体験に圧倒されている患者が、その病的体験を言語化することで、治療的変化につながることがある。

オープンダイアローグを経験した人の言葉 「以前の治療では、私はまるでその場にいないかのように扱われました。今はすべてが違います。私はここに確かにいるし、きちんと尊重されています」 が象徴的である。

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更に、ミーティングの実際や、北海道の精神障害者治療共同体「べテルの家」との類似性にもふれている。

そして、今後日本での実践導入の課題(臨床、理論、組織、精神医学会の抵抗、これからの治療文化)を上げている。

いろいろな課題を提供する魅惑的な内容である。