book「Open Dialogue 開かれた対話 — 注目を集める統合失調症治療法」

Open Dialogue 開かれた対話
注目を集める統合失調症治療法–向精神薬を極力避ける
OpenDialogue 開かれた対話 ドキュメント映像

フィンランドの北極近くのラップランド地方の病院で1980年代から開発、実践が行われてきた主に初期統合失調症への治療法です。

この治療の原則とアプローチは

・向精神薬の使用を極力避ける。
・患者から連絡が入ると24時間以内に、病院スタッフ(医師、看護師、心理士、福祉士など)複数人のチームが患者宅に向かう
・患者宅で、このチームと患者、家族がミーティング(開かれた対話)をもつ。
これは、状態が落ち着くまで毎日続けられる。このチームが継続して関わる。
・このミーティングは、「全員が平等、秘密は持たない、全員の意見を尊重、特に患者の意見を重視、治療法は患者が決める」原則で、チームメンバーも患者、家族のなかで考えや気持ち、治療法などを話しながら進めていく。
患者の幻覚、幻聴などの話もしっかり表現できる場とする。

というものです。

従来の精神医療では考えられないものです。

そしてこのサービスは、フィンランドの社会的医療の中で、無料で提供されています。

この実践を通じて
・入院治療期間が平均19日短縮
・再発率24%に低下(従来の通常治療では71%)
・統合失調症患者人数は90%減
となっています。

チーム人員も多く費用がかかりそうですが、長期的に見ると軽減されます。

このモデルは,ロシア,ラトビア,リトアニア,エストニア,スウェーデン,ノルウェーなどに国際ネットワークがあります。

日本版オープンダイアログの実践を期待したいものです。

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斎藤 環氏(精神科医、筑波大学教授)の寄稿文から一部紹介
(週刊医学界新聞 第3082号 2014年6月30日)
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それではなぜ「開かれた対話」が治療的な意味を持ち得るのだろうか。

ODAP(注:オープンダイアログのこと)には,二つの理論的支柱がある。
G.ベイトソンの「ダブルバインド理論」と,M.バフチンの「詩学」である。
ことに重要なのは後者だ。そこでは「モノローグ(独り言)」の病理性に「ダイアローグ」の健康さが対比される。
統合失調症の患者は,しばしば病的なモノローグに自閉しようとするが,ODAPによる介入は,それをダイアローグに開くように

作用するのである。

発症当時は全てがあいまいである。ODAPでは,あえて診断や評価には踏み込まず,あいまいな状況をあいまいなまま対話に

よって支えていく。

その際,参加メンバーの役割や社会的階層は重視されない。
メンバー全員のあらゆる発言が許容され傾聴される。
この雰囲気そのものが安全感を保障する。どんな治療手段(入院,服薬など)が採用されるべきかについては,対話全体の流

れが自然な答えを導いてくれるまで先送りされる。

統合失調症の発症初期において,患者は自らの耐えがたい体験を語るための言葉を奪われている。
それゆえ,患者が幻覚や妄想について語り始めても,スタッフはそれを否定したり反論したりせずに傾聴する必要がある。
その上で「自分にはそうした経験がない」という感想を語り合ったり,その体験についてさらに詳しく患者に尋ねたりする。

ODAPでは,議論や説得はなされない。
この対話の目的は,合意に至ることではないからだ。
安全な雰囲気の中で,相互の異なった視点が接続されること。
ここから新たな言葉や表現を生み出し,象徴的コミュニケーションを確立することは,患者個人と社会とのつながりを回復し,新

たなアイデンティティと物語をもたらしてくれる。
これがODAPのもたらすポジティブな変化であり,臨床上は症状の改善として現れるのである。

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なお、「開かれた対話」のドキュメント映像がこちらから見ることができます。
日本語字幕付き本編(74分)  予告編(3分)
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