心の応急手当 2分間の集中

「心にも応急手当が必要な理由」TED(NHKスーパープレゼンテーション)
ガイ・ウィンチ(ニューヨーク大 臨床心理学博士)


「心にも応急手当が必要な理由」字幕動画

身体に傷を負ったとき応急手当をするように、失敗や孤独など心の傷にも応急手当が必要。
誰もが陥りやすい心のクセ、反芻(はんすう)を克服することの意味とその方法をわかりやすく解説している。

<以下「 」は動画からの引用>

「反すうとは 何度も噛み続けることです。
上司に怒鳴られた時 教授に授業で馬鹿にされた時 友達と大喧嘩をした時
その場面を何日も 頭の中で 繰り返さずにいられません。時には数週間です。 こういった腹の立つ出来事の反すうは 簡単にクセになり、 しかも その代償は とても大きいんです。
非常に多くの時間が 腹立たしくて、ネガティブな思考への集中に使われ、 自分を大きなリスクに さらすことになるからです。
うつ病やアルコール依存症 摂食障害 はては 心血管疾患まで。」

「問題なのは反すうの衝動が非常に強く、それを重要だと思い込んでしまうことです。 そのためこのクセをやめるのは 難しいのです。」

しかし
「研究によると たとえ2分間でも 気を紛らわすと良いんです。 するとその瞬間は 反すうの衝動から解放されます。
ですから不安や動揺 ネガティブな思考におそわれた時はいつも 僕は衝動が去るまで 他の事に集中するようにしていました。
1週間もしないうちに 物の見方が変わりました。もっとポジティブになり 希望をもてるようになりました。」

「孤独な時何か行動を 起こすことによって、
失敗に対する反応を変えることによって、
自尊心を保護することによって、
ネガティブな思考と対決することによって、
あなたは心の傷を 癒せるだけでなく 感情の抵抗力を身につけ 成長できるのです。」

「こんな世界を 想像できますか?
もしあらゆる人が 心理的にもっと健康になったら?
孤独や落ち込みを それほど感じないでいられたら?
失敗の克服法を 知ったら?
自分をもっと好きになり より自信を持つようになったら?
もっと幸せで 充実感を得られたら?
僕には想像できます それが僕の住みたい世界ですからね
皆さんが知識を得て 少しの簡単なクセを直すだけで 住みよい世界が 実現するでしょう 」

<気づきのヒント17>父の価値観に追い詰められた男性、絵本が人生の転機に 

(朝日DIGITAL 2016年8月19日http://digital.asahi.com/articles/ASJ8963R9J89UTFK00S.html
からの転載です。)

かつて「男らしさ」を強要されて傷ついた。いまは自分自身を受け入れ、再生した男性がいる。

名古屋市の食品工場で契約社員として働く男性(41)は「ぼくは父にとって、理想の息子じゃなかった」と振り返る。

幼稚園のころから集団にうまく溶け込めず、小学校でもいじめられた。父は「男なんだから泣くな」。周りの男子と同じようにできないことをなじられ、平手打ちや、髪の毛を引っ張られることもあった。

休み時間や放課後は学校の図書室へ通った。絵本が大好きだった。だが借りて帰ると「男らしくない」と父に取りあげられ、柔道教室に通わされた。絵を描いていると、「野球かサッカーをしろ」と父は言った。

高校を卒業して働き出したが、就職氷河期で、アルバイト生活が続く。「男は正社員として、家族を養うもの」という父の価値観にとらわれ、正社員になれない自分を責めた。いつも自信がなく、自分を肯定できなかった。

女性との付き合いでも嫌な思い出がある。車の運転免許を持っていない。女性とドライブに行く時、助手席に座ると、「そこは男が座るところじゃない」と言われた。

4年ほど前、アパレル業の契約社員になった。仕事の量が多すぎてさばききれず、正社員の上司から客の前でも何度も罵倒された。誰かに助けを求めることは「弱さ」であり、「悪」だと思っていた。能力のない自分が悪いのだと。

我慢の糸が、ある日切れた。上司に「こっちだって必死にやってるんだよっ」と言い返したら、ふっと心が軽くなった。それ以来、同僚に手助けを頼めるようになった。

上司に反論したからか、仕事はその後、すぐにクビに。でもこの経験で発見があった。「自立とは『人に頼らない』という意味じゃないんだ」。自分で自分を追い詰めていた、ということにも気がついた。

父に隠れて小さい頃から読んだ何百冊もの絵本のうち、ある1冊が教えてくれたこと。アパレル職場での経験とちょうど同じ頃だったろうか。

「そらのいろって」(ピーター・レイノルズ作)。女の子が空の絵を描こうとしたが、青い絵の具がない。困って空を見上げると、決して青一色ではない。いろいろな色を混ぜ、自分だけの空の色をつくる――という物語だ。

「どんな色であっても、僕は僕なんだ」

そんな生きる支えとなった絵本がきっかけで、人生は思わぬ方向へ転がり出す。絵本について詳しいことが口コミで広がり、今では仕事の傍ら、週1回ほど個人やカフェの絵本選びの手伝いをするように。頼りにされ、相談をうけるのが喜びで、アドバイスするのが楽しい。

数年前、父が肺の病気を患った。出来るだけ顔を合わせたくないと実家を避けてきたが、父の顔を見に時折、帰るようになった。大きくて怖かった戦中生まれの父は、年老いていた。

「父も必死だったんだろう。昔の彼女も。ああいう風にしか生きられなかったのかもしれない」。以前は抱いていた、殺意に近いほどの恨みの気持ちは、もうない。

 

 

<気づきのヒント16>「復職したのですが、期待にこたえられません」 

うつ病での休職からようやく復職できたTさん、30代会社員。

復職に際しては、最初は残業、出張なし、疲れがたまると悪化するまえに有給休暇をとることなどを人事や上司も理解してもらい、まわりにも迷惑をかけない自分なりの適応パターンがとれるようになっていました。

ところが、人事異動で上司が変わり、これまでの事情を知らない上司は「休みすぎる、まわりと同じように成果をだせ、自己管理ができていない」など厳しい言葉を出してきます。

Tさんは、自分のがんばりが足りないのか、やはりこの仕事はむいてないのかと自分を責めてしまいせっかく芽生えてきた自信を失いかけています。

そんなTさんの気持ちを聴いていくと、新しい上司の言動に「なにかおかしい」とも感じています。

以前のTさんはは、上司の期待にはなにがなんでもこたえようと知らず知らずに無理を続け、うつの症状が出ても病院にも行かずに、まだ頑張りが足りないと仕事を続けていたのです。
今回の休職しての治療の中で、このことに気付き、これまでとは違う働き方の必要性を身に染みて感じていたのですが、また揺らぎはじめています。

しかし、今の勤務パターンは、治療のなかで医師やカウンセラーと考え、前の上司も人事も了承してくれている、これまでの新しい上司は事情も知らず一方的すぎるのではないか、ここで無理をするとまた以前の繰り返しになってしまうのでは、ということから、元の上司に相談してみることにしました。

元の上司に話してみると、「彼はああいうタイプだから、前の職場でも具合が悪くなった部下がいたようだ」とのこと。

そこで、Tさんの今の目標は「上司の理解を得ること」ではなく「上司に巻き込まれないようにすること」とすることに変わりました。
上司からはかわらず厳しい言葉が出てきますが「すいません、気をつけてはいるんですが」と軽く流すようにしています。

復職後の職場、上司の理解はとても大切です。
しかし、なかなか理解してもらえない上司もいます。
相手の考えが変わればいいのですが、そこは相手の中の問題「他人の考えは変えられない」として手放すことも必要です。

(事例は、複数の実例や関連資料の組み合わせで構成しています)

 

 

<気づきのヒント15>「コミュニケーションが苦手で困っています」

やっと再就職できたSさん、生真面目そうな20代後半男性。

「新しい職場で、昼休みみんなが楽しそうに話してる輪の中になかなかはいっていけません。
どうやったらうまく話せるようになりますか・・・」
「声掛けもしてくれません」
「挨拶しても返事もしてくれません」
と困惑した表情で力なく訴えます。

職場の人間関係は、職場でのストレスの一位になっています。
職場でのコミュニケーションは永遠の課題と言われています。

また「コミュニケーション力がないと就職できない」と過剰反応してしまうケースも多いようです。

人間関係は、自分と相手との「関係性」です。
相手にこうしてほしい、こうなってほしいという希望はもってもいいですが、相手を強制的にかえることはできません。

「他人は変えられない」のです。「変えられるのは自分」です。
自分が変われば、相手との「関係性」は変わります。

ただし、自分が変わるといっても急に違う性格に変わることはできません。
これまでと少しだけ違う行動を、少しだけ勇気を出してやってみましょう。

挨拶もできない状態なら、まずは「おはようございます」から。
でも相手はすぐに返事してくれないかもしれません。
粘り強く続けてみましょう。

次のステップは、質問をしてみます。
質問は、仕事のことでも、趣味のことでも構いませんが、相手の得意なことを聞いてみます。
誰でも、自分の得意なこと、好きなことを質問されると悪い気はしません。
一気に距離が縮まるかもしれません。

もちろん輪の中で、話題を提供するだけがコミュニケーションではなく、話をしっかり聴いているだけでも十分コミュニケーションは成立しています。

また、全員と同じ距離を保つ必要はなく、人によって距離を変えながら人間関係をとれれば十分です。
「友達100人できるかな」にこだわる必要はありません。

Sさんも、少し気が楽になったようでチャレンジ始めました。

 

 

<気づきのヒント14>「どうすれば心が強くなれますか」 

「上司から注意されるとすぐに落ち込んでしまう、ずっと考え込んでしまう」
「また失敗するのではといつもビクビクしています」

「こんな弱い心を強くする方法を教えてほしい」
「相手を言い負かす方法を教えてほしい」
と会社員の男性Fさん、25歳。

話を聴いているとどうも「鋼のように何が来ても折れない強い心」をのぞんでいるようです。
スポーツジムで筋トレをするように、カウンセリングで心を鍛えたいということです。

カウンセリングは、性格を矯正したり根性を叩きこむようなことをするのではなく、どんなときに落ち込むのか、どんな気持ちなのかを自由に出してもらい、自分の傾向や問題に気づき、自分自身が変化する意識をもてるようにサポートしていくものであること。
そもそも、落ち込みやく不安、悔しさ、辛さなどの感情が出てくること自体は、悪いことではないこと、生きているからこそ人それぞれの感情が出てくること、
などを伝えました。

Fさんは「とにかく早く即効方法が知りたい」を繰り返していましたが、自分の不安や悔しさなどの感情に焦点を当ててお話を聴く中で、少し落ち着いて、カウンセリングを継続していくことになりました。

「心のタフネスは、心を鍛えあげることではなく、
気分転換という心の柔軟さによってもたらされる」
(山崎房一)
という言葉が思い起こされます。

<気づきのヒント13> 「もうなにもかもダメです・・・」

「もうなにもかもダメです・・・  」

入社半年で会社を辞めてきたという20代前半の独身男性。
とても落ち込んで混乱しているようです。

「自分でも興味のあった建築関連の会社に入社でき将来の希望ももてていたのですが、この間、仕事に向いていないことや、自分の能力のなさを実感させられました。」

「先輩のいう専門用語についてけない、質問もできる雰囲気ではない。
上司からはやる気があるのか、気合がたりない!といつも言われる」

「そもそもコミュニケーション力がなく、同僚ともうまくしゃべれないし、言ってはいけないことをしゃべってしまう。
協調性もなく、融通もきかない、社会人としてついていけない。」

「食事ものどを通らないし夜も眠れない。
こんな未熟な自分は社会人としてやっていけないと思い、会社をやめました。
会社を紹介してもらった大学の教授にあわせる顔がない・・・」

話を聴いていると、自己評価が極端に低く、思い込みの部分がかなりありそうです。

更に職場の雰囲気もよくなさそうでもあるし、パワハラまがいのことがまかりとおっている可能性も感じられます。
建築の仕事への向き不向きとは別のことのようです。

もっと、自分のことや、職場環境を客観的にみて整理していくことが必要と思われます。

しかし、混乱している今、これを指摘してもなかなか受け入れられません。

まずは、会社を辞めることで自分の力で自分を守った事実を伝え、「それでよかった」と肯定すると、少しほっとした表情になりました。

ここからが次のステップへのスタートです。

ひどく落ち込んだり混乱しているときに、心に響くのはこの「無条件の肯定」です。

(この事例は、実際のケース内容を変更して書いています。)

 

 

<気づきのヒント12> 「絵を描いてみる」

カウンセリングのなかで「絵」を描いてもらうこともあります。

例えば、親にカウンセリングに連れてこられた不登校の子どもが、話すことを拒否している場合や、小学生などで気持ちや考えを言葉でうまく伝えられない場合に、絵を描いてもらうことを提案します。

一般的な絵画療法では、このようなケースや年齢に限られているわけではありません。

画用紙とクレパスを用意し、どんな絵でも自由に描いてもらいます。

○○の絵を描いたから、**の色を使ったからと、単純にその人の性格や心の内が分析できるものではありません。
また、絵の上手下手が問題でもありません。

描かれた絵を見ながら、少しずつ会話が交わされるようになってきます。
何を思って描いたのが、何が好きなのか、嫌なのか、描き終った今の気持ち、絵から連想されるものなどを話し合います。

カウンセラーもその絵を、常識や一般論ではなく、心で感じていく、雰囲気やパワーや細部を感じていきます。
そんな中で、徐々にあるいは突如、絵とは直接関連のない会話が出てくることもあります。

1回の面談の中で何枚も描く場合もあれば、1枚だけの場合もあります。
何回か続けて描いていくことで、その変化を見ていくことが大事なことです。

アニメのキャラクターを描いた少年は、初めは左向きの顔ばかりだったのが右向きも描くようになったり、上半身が多かった絵が足まで描くようになったり、人数や物の数が変わったり、そして色や背景、描きはじめるまでの様子、時間、描いているときの様子・・・・・など様々な変化がありました。
これらと並行して日常生活での変化、気持ちの変化もみられることも少なくありません。

なお、カウンセリングの中で自由な絵を描いてもらうことは簡単そうですが、ユング心理学、箱庭療法、絵画療法などの理論もしっかり持ちながら、本人の状況、状態を判断して実施する必要があります。

カウンセリングの中ではなく、一人でふと浮かんだ心の風景を描いてみる、
抽象的なものでも現実的なものでも、
想像をふくらませながら自由に描いてみる、
こんな時間を持つのもいいかもしれません。

*絵画療法としては、バウムテスト(樹木画)、HTP(家屋、樹木、人物画テスト)、DDS検査や風景構成法などがあり、検査や療法として確立されています。これらは描く順序や内容が決められており、セラピストやテスターがガイドします。

 

 

<気づきのヒント11> 「腰痛」

慢性腰痛だからと初めからカウンセリングに来る人はまずいません。
普通は整形外科を受診します。あるいは鍼灸やマッサージ治療院にいくでしょう。

しかし、うつや不安障害、対人関係、など心の相談でカウンセリングに来る人の中で、腰痛などの身体の慢性的な痛みを訴える場合が少なからずあります。

カウンセリングではもちろん「心の問題」に取り組んでいきますが、その問題が落ち着いてくると、慢性的な痛みが軽減してくる場合もあります。

心の問題が身体的症状(軽い症状から悪性腫瘍、アレルギー、リウマチ等々)に影響していることは従来からよく言われてます。

以下、腰痛・痛みと心理療法に関してまとめてみました。

①痛みの慢性化

怪我は治癒したのに痛みだけが残ってしまうこともよくあります。
痛みが再発、慢性化すると、日常生活にも大きく影響し、精神症状も悪化します。

痛みが慢性化するのは
・脳が痛みに過敏になり、少しのきっかけで痛みを増幅させたり持続させたりする
・痛みを抑える物質を放出する脳の機能がストレスなどで低下する
・痛みの信号を脳に伝える機能が、気分や思考で変化する。否定的な思考で通りやすく、プラス思考で通りにくくなる。(ゲートコントロール理論))
・異常がないと言われるとより不安になり、意識が痛みに集中、痛みを避ける行動により生活に支障が生じ、この痛みさえなければとさらに痛みに意識が集中する。
などが考えられています。

これらに対応する心理的アプローチとしては
・起こっている事実と感覚、感情、行動を正確に客観的にとらえて、
ものごとのとらえ方や思考のクセを、より適応的なものにしていく方法(認知の再構成)
・身体をリラックスさせるリラクセーション法
などがあります。
うつ病の治療に使われるようになってきた「認知行動療法」です。

②腰痛治療の常識の変化

なかでも、慢性腰痛についてはここ数年次のような考えが定着してきました。

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NHK今日の健康2013.7.3  腰痛を徹底改善「ストレスも関係!」
から引用

①心理的要因が起こす腰痛
一般に、発症から3か月以上続く腰痛を慢性腰痛と呼びます。
慢性腰痛を起こす要因には、骨や筋肉に異常がある「器質的要因」、
家庭か職場などの「環境的要因」、うつや不安などの「心理的要因」があります。

腰痛の原因がはっきりせず、保存的治療(保存療法)を受けても痛みが長引く場合には、心理的要因の中でもストレスが関係している可能性が考えられます。

精神的なストレスが強いと、痛みを抑える脳内物質が放出されにくくなったり、楽しいときには痛みを忘れるような仕組みが、うまく働かなくなったりします。

②認知行動療法
近年、ストレスが原因の腰痛には、うつ病などの精神療法として行われてきた「認知行動療法」という治療が有効であることがわかってきました。

痛みも含めて、マイナス思考に陥っている原因を1つずつ解決したり、回避する方策を見つけたりして、前向きな気持ちになってもらうことが目的です。

まず、患者さんの状態を問診やアンケートから評価し、治療方針が決められます。
治療の内容は、患者さんの状態や生活環境などに応じて変わり、薬物療法や運動療法、心理面のケア、生活のアドバイスなど、多面的に行われます。
そのため整形外科を中心に、神経精神科、リハビリテーション科、麻酔科など複数の診療科の医師や理学療法士、看護師などとも連携して治療に当たります。

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このほか同様の内容があります。
NHKチョイス 腰痛 原因はストレス?

NHK今日の健康
腰痛をしっかり治す「この腰痛は何が原因?」

③腰痛診療ガイドライン

日本整形外科学会「腰痛診療ガイドライン 2012年」でも、心理的・社会的要因があることが明記されています。
さらに、慢性的な腰痛治療として、
安静より適度な運動が必要なこと、
画像診断は全例に必要ではないこと、
などとともに
「認知行動療法」の有効性も記述されています。
(欧米ではすでに同様のガイドラインが常識になっています)

*慢性腰痛には、身体的な損傷や消化器系・泌尿器系・婦人科系疾患などが原因の場合もあるので、まずは専門医の診断が必要です。

 

 

<気づきのヒント10> 「いつも人の意見に左右されてしまう」 

「人の気持ちや評価に左右されやすい」「人の意見を優先してしまう」
だと、結局、自分はどうしたいの分からなくなってしまうこともよくあります。

職場の上司や同僚から、或いは友人や先生からどう思われているか
ばかり気になっていませんか。

人の意見を聞いたり、気持ちを大切にするのことはとても大事なことです。
が、自分の考えや行動の最終判断は、自分の視点ですることです。

人の意見や評価をばかりを優先させると、自分で考えているように思えても、
実は周りの人の視点(目)で見ていることになります。

自分の中にある目が、自分の中から抜け出して周りの人の中に入り
そこから自分を見ています。
周りの人は一人ではありません。たくさんの異なった視点(目)で見ています。
これでは、自分が何者か、どうしたいのかという考えは混乱するばかりです。

自分の中から抜け出した目を、もう一度自分の中にしっかりと引き戻すことが必要です。

「○○さんが~~と思うから***しよう」は、主語は「○○さん」になっています。
考える中心は自分、「自分」を主語にして考えてみましょう。

自分は周りからどう思われてるかなど気にしていないと、日頃思っている人も
無意識に気にしていることもあります。
時にはもう一度見直してみましょう。

 

 

 

<気づきのヒント9> 「どうしたら緊張せずにできますか」

「会社の大事な会議で声が震えてうまく話せなかった」「年上が大勢いる結婚式のスピーチで頭がまっしろになってしまった」「職場のグループでランチするとき緊張してしまう」

人に見られる場面、注目される場面では、程度の差はあっても誰でも緊張します。
が、仕事や生活に大きな支障が出る場合はカウンセリングも利用できます。

カウンセリングでは、緊張したり、周りの目が気になったのはどんな場面、どんな相手か、緊張しなかったのはどんな場面か、見られている自分をどう意識しているか、など認知(ものの見方、考え方)の傾向やこれまでの対人体験からアプローチしていくことが多いです。

しかし緊張は、このような心理的側面だけでなく、身体的反応としての側面も大きくあります。

からだの反応は、「ドキドキする」「汗がでる」「震える」「声がでない」「息苦しい」「のどが渇く」「顔が赤くなる」「肩が痛い」「お腹がいたくなる」「トイレにいきたくなる」などが出てきます。

これらは、からだが自然に反応して起こる現象です。
私たちのからだのバランスを取ってくれている自律神経の働きです。
脳が危険を察知すれば、自律神経の交感神経が活発になり緊張モードにはいります。
心臓早く動き、筋肉は緊張します。
危険が去れば、副交感神経が活発になりリラックスモードに戻りますが、なかなか戻らないと緊張が続きます。

そこで緊張モードになったからだを、意識的にリラックスモードつまり「ほぐして」やればいいのです。
からだからのアプローチです。

深呼吸したり、肩をまわしたりと自然にやってることもあります。

緊張に気づいたら、緊張しそうと感じたら、まずはからだをほぐしてあげてください。

簡単な方法はいくつかあります。
ゆっくり呼吸する(できれば腹式呼吸)、
肩あるいは腕をを力いっぱい上げてからゆっくり落とす(筋弛緩法)、
軽いストレッチ、
手のひらの側面の真ん中のツボをたたく(TFTのタッピング)
など自分にあったものを使うといいでしょう。

大事な場面では緊張が必要なこともあります。
「緊張をゼロにする」のではなく「緊張を感じても少しでも軽くする」ことが大事です。

からだからのアプローチを覚えておいて、いつも使うことで「緊張」に巻き込まれずうまくつきあっていきましょう。

<気づきのヒント8>「ネガティブ感情を文字にしてみる」

辛いこと、悲しこと、腹の立つことなどの感情を専門家のカウンセラーに話す、吐き出すことは、カウンセリングの基本で大切なことです。

吐き出すだけでなく、文字にして書き出すことが次のステップに進む一つの方法になります。

あるいは、吐き出す相手がいないときや、話すこと、吐き出すことが苦手な場合にも、書き出すことが役に立ちます。

書き出すとき、文字にするときは、自然に頭を使って考えています。
自分の感情、思考を自分の外に放り出し、距離をおいて客観的に見ていることになります。

そして書き出すと、記録に残ります。
記録を後から見れば「こんなことを感じていたが今は違う」「同じようなことばかりで悩んでいる」などに気付きます。

日誌風に毎日書き出し続けていると、自分の感じ方、思考の共通パターンが見えてきます。
心が整理されてくるのです。

出来るだけ毎日続けることが大切です。
書き続けるとパワーがでてきます。
体重を記録し続けるだけでもダイエットにつながるのと同じようなことです。

もういらないと思えばその記録を燃やしてしまってさっぱりすることもできます。

「辛いこと」を書き出すことと同じように、「うれしかったこと、楽しかったこと、がんばってできたこと」を書き出すことも新たな気づきになります。
これらは、小さなことを見逃さないことです。
「帰り道できれいな花を見つけた」「久しぶりにコーヒがおいしく感じられた」など日常のちょっとしたことにも注目します。

「辛かったノート」「よかったノート」どちらも心の整理に有効です。
それぞれの人で「辛かったノート」が必要な時期と「よかったノート」が必要な時期があります。

セルフカウンセリングとしてこのノート、日誌を試してみてはいかがでしょう。
書く出すのは紙のノートだけでなく、パソコン、ケータイ、スマホも活用できますね。

 

<気づきのヒント7>「この症状はいつ治りますか」

「なにもやる気がでない」「人が怖くて外出できない」「悲しみでほかのことを考えられない」
様々な心の悩みや症状をかかえていると、誰でも一刻も早く抜け出したくなります。

不安などへの対処、捉え方はいくつかこれまでもお伝えしてきました。
今回は別の側面からです。

いつ治るかが気になりますが、まず「治る」「治った」とは、自分がどんな状態
なのかを考えてみます。当面の治療の目標です。

目標は、「以前の自分のように、或いは~さんのように元気にバリバリ仕事ができること」などとなりがちです。
が、そればかりでなく例えば「人の目を気にはするがそればかりにとらわれない」「落ち込むことがあってもなんとか乗り越えられる」「他人優先ばかりでなく自分優先も大事にする」など、これまでの自分を修正したものも取り入れます。
これには、時間がかかりますが一番大切なところです。

目標をできるだけ具体的にイメージし、目標を100点としたら現状は何点か考えてみます。
現状40点ならその差60点をうめていくことになります。

そしてまず40点が10点上がった状態はどんな状態か、10点あげるためには何をすればよいか、なにができるかを考えて、実践していきます。

治る時期はいつかと漠然と考えていても答えは誰にもわかりません。
当面の具体的な課題を一つずつ実践していくことが必要でしょう。
目標や課題は見直しながら柔軟に対応していきましょう。

<気づきのヒント6> 「子供の不登校の原因はなにですか」 

不登校の子供の親だけが相談に来られるケースでは、
「子供がこうなった原因はなにでしょう。
母親の育て方ですか、父親の不在ですか、子供の性格ですか、学校の問題ですか」
と原因を尋ねられることがよくあります。

原因を知りたいという気持ちもわかります。
が、こころの問題は、単純に原因が分かればすべて解決というわけにはいきません。

きっかけは分かりやすいこともあります。
しかし不登校へのプロセスは、それまでの家族関係、学校関係、その他の出来事、体験などが複雑に絡み合っています。

必要なのは、原因を突き詰めて悪者を決めることではありません
起こったことを、今後の家族関係と、今後の子供ににどう活かしていくのかを考えることではないでしょうか。

まずは、親が子供をなんとかしようという発想は棚上して、子供の気持ちを聴く、子供が自分から話せる環境をつくることからです。
これが出来てくると、次のステップにすすんでいくことができます。

ただし、子供に無理に話すように促したり、子供の気持ちを完全に理解しないといけない、など完璧を求めすぎないことも大切です。
親の、あせらずどっしり構える姿勢も必要でしょう。

<気づきのヒント5> 「なかなかプラス思考になれません」

「そんなマイナス思考やめて、もっとプラス思考にしたらいい、と言われるん
ですが、それができない自分が余計に嫌になってしまうんです・・・・」

言われてることは分かっても、どうしてもできないことは誰にでもあります。

辛いときはマイナス思考から抜け出せないときもあります。
大切な人を亡くした時などは、とてもネガティブな考えから抜け出せません。
こんな時は逆にしっかりと悲しみに浸る時間が必要なのです。

マイナス思考からプラス思考に180度転換できるときは、転換するといいでしょう。
しかし、180度転換でなくても、90度だけ45度だけ変えるのも一つの方法です。
逆転ではなく、ちょっと違う考え方、捉え方もきっとあるはずです。

また、問題がいくつかある場合は、そのうちの一つでも少し転換できれば状況は変わります。

マイナス思考は良くない、プラス思考は良いという単純なものではありません。
プラス思考できないのが問題なのではなく、どちらか一方からだけしか見れないのが問題ではないでしょうか。

<気づきのヒント4> 「カウンセリングを受けてもよくなれない自分に余計に落ち込みます」

カウンセリングの中では、いろいろなホームワークを提案することがあります。

たとえば
辛いことをノートに書いてみる
ちょっと楽に感じたことをノートに記録する
1日1回散歩する
腹式呼吸や自律訓練法を練習する
TFT療法をやってみる
認知行動療法のコラム(思考記録票)を作成する
などです。

これらは、症状の軽減や、新たな気づきを促すために行ってもらいます。

しかし、生真面目な人、完璧好きな人は、これらのホームワークもついつい頑張りすぎてしまうことがあります。
早く良くなりたいという気持ちを持つのは大切なことですが、ホームワークをやることが目的のようになり、かえって疲れたり、プレッシャーになったりします。

そして、できなかったこと(しかも完璧にできなかったこと)、やったが効果が見えなったことに、落ち込んでしまいます。
「これもできない自分が情けない」「やはりなにもできない」「一生なおらない」と。

いつも完璧、いつも頑張る、100点でないとダメ、
これらをもっと柔軟にできるようになることもとても大事です。

ただし「完璧に柔軟になる」ことではないですね。

<気づきのヒント3> 「不安で頭がいっぱいで、夜も眠れません」

うつ病再発を繰り返し、職場を退職してしまったYさん。
症状は回復してきましたが、なかなか再就職活動にとりかかれません。

早く再就職したいというあせる気持ちとともに
「どんな仕事があるだろうか」「仕事についていけるだろうか」「覚えられるだろうか」
「どんな人がいるのだろうか」「人間関係でうまくいいかなかったら」「またうつになったら」「会社が倒産したら」「収入が途絶えたら」
と心配や不安が頭から離れることがありません。

これまでうつ病再発を繰り返しながら、仕事をなんとか続けたにもかかわらず、退職せざるを得なかった悔しさ、情けなさ、挫折感は相当なものがあるでしょう。
そして今後の不安感を持つのも当然でしょう。

しかし、ここでこれらの不安の内容を冷静に見てみましょう。
不安には
①調べたり、考えたりしてわかること、
②調べたり、考えたりしても誰にでも分からないこと
があります。

「どんな仕事があるか」「その仕事の内容はなにか」は調べたり聞いたりすると、ある程度わかることが多いです。

「覚えれれるだろうか」は実際に仕事を始めるときにそのやり方を覚えるしかありません。

「人間関係がうまくいくか」や「会社が倒産するか」などは、だれが考えても、調べても分かりません。
このような、誰が考えてもどうなるか分からない不安は、次々と湧き上がってきますが、それを頭の中で考えてもかえって不安の渦に巻き込まれて出れなくなるばかりです。

不安が湧き上がることが悪いのではありません。湧き上がった不安の処理の仕方が問題なのです。
不安をしっかりと分別し、②の不安は頭の中に留めるのではなく、少し横に置いたり、棚上げする、などをイメージしてみてください。

すべての不安をすぐにこんな処理ができなくてもいいのです。
10個の不安が出てくれば、その内の1個でも棚上げできればいいです。1個ずつ増やしていけばいいのです。
これも、あせらずにやってみることが大切です。

 

 

<気づきのヒント2>「毎日ずーっと落ち込んでいます」

「辛い」「悲しい」「悔しい」「落ち込む」「不安」などのマイナスの気持ちは、一刻も早くきれいさっぱりなくなってほしいものです。
前回「0か100か」「白か黒か」と何事も極端に判断してしまう傾向はないかと、お話しました。

「1日中落ち込んでいた」と訴える方に、朝(あるいは昼)起きて、夜寝るまでの間どのように過ごしていたか、時間を追って詳しくみてもらいます。

その中で、①「落ち込んでいた」時とあわせて、
②「落ち込んでいたとは感じない」あるいは「そのことを忘れていた」時、も探してもらいます。

②は、短い時間でも、たまたまでもかまいません。必ずいくつか見つかります。
「落ち込んでいた時間」と「それを感じない、または忘れている時間」があることに気づきましょう。
つまり「1日中ずーっと落ち込んでいた」のではない事実が分かります。
1日単位でも、1週間単位でも、1ヶ月単位でも同じことです。

人は、辛いこと嫌なことの方が記憶に残りやすい傾向があります。
逆に「それを感じない、または忘れている時間」「少しほっとしていた、楽だった時間」の記憶は薄れてしまう傾向にあります。

辛いと感じている自分と、感じてない自分、両方合わせもっているのが自分です。
辛い時間の方が多いかもしれませんが、両方の自分を見てあげましょう。

辛さをなくそうなくそうと考えれば考えるほど、意識は辛いことでいっぱいになります。
それよりも「辛さを感じない、または忘れている時間」「少しほっとしていた、楽だった時間」に注目し、それを1分でも2分でも増やすには、なにをすればいいか考えてみましょう。
それが辛い時間を減らすことにつながります。

<気づきのヒント1> 「いつも、誰もわかってくれないんです」 

「いつも失敗ばかりしてダメな人間です」
「誰もわかってくれないんです」
などと訴える方はとても多いです。

とても厳しい、辛い状況のなかで、
このような気持ちになってしまうことはよくあります。
このままでは出口が見つからず、余計に落ち込んでしまいます。

ここでは何が起こっているのでしょうか。
少し冷静に考えてみましょう。
「辛い」「悲しい」「悔しい」「落ち込む」などは、
人間の自然な感情です。
生きている証拠です。

もう一方、周りの状況はどうでしょう。
「いつも」はすべての時でしょうか、
失敗せずにできている時は全くないのでしょうか。

「誰も」はすべての人でしょうか。
すべての人とはどこまでの人でしょうか。

「わかってくれない」のはすべてのことでしょうか。
わかってもらえたところが全くないのでしょうか。

事実を正確に見直してみることが
とても役に立つことが多いです。

「いつも」「だれも」「わかってくれない」は、
0点か100点かではないですね。
その割合はどれくらいかをしっかり客観的に見ることで、
気持ちや感情は変わってきます。

0か100か、白か黒かで判断してしまう傾向がないか
注意してみてください。

このような傾向を「認知行動療法」では、
自動思考(こころのクセ)のひとつとして
極端なとらえ方をバランスのよいとらえ方に広げていくようにします。